「天才」

作家であり政治家であった石原慎太郎氏が、令和4年2月1日にお亡くなりになりました。

昭和7年(1932)神戸市で生まれ、一橋大学在学中に執筆した「太陽の季節」により芥川賞を受賞。
ミリオンセラーとなった「弟」他多数の著作があります。
その石原氏が、中央工学校第5代校長田中角栄氏を題材に著した作品があります。
タイトルはなんと「天才」。
「俺」という一人称で、角栄氏自身が半生を語るように描かれています。
その中で「土建会社の小僧になったこともあり、神田の私立中央工学校の土木科に入学することにした。
当時の生活状況は朝五時に起き上がり六時までに店の掃除を済ませて工事現場に駆け付け、五時まではみっちり仕事をして、その後、六時の学校の始業に間に合うように自転車を飛ばして駆け付けるといった体のものだった」と母校を振り返っています。

石原氏は巻末の後書きに、「歴史への回顧に、もしもという言葉は禁句だとしても、無慈悲に奪われてしまった田中角栄という天才の人生は、この国にとっても実は掛け替えのないものだったということを改めて知ることは、決して意味のないことではありはしまい」と記しています。
昭和を代表する政治家田中角栄氏の政敵とまで称されていた石原慎太郎氏。
稀代の「天才」同士による心の触れ合いを感じさせる名著です。
ぜひお読みください。

幻冬舎文庫「天才」著者:石原慎太郎