「そして父になる」

平成24年(2012)の事でした。

ある映画製作会社のスタッフさんから電話があり、映画の撮影に必要な建築の模型を借用できないか?という依頼を受けました。
学内は学生が作った模型であふれており、気に入ったのがあればどうぞ使ってくださいとお話したところ、後日企画書とともにスタッフさんがおいでになりました。

失礼ながら自主制作映画程度なのだろうと思っていましたので、随分丁寧だな?と思い拝見。
表紙に劇場用映画企画書と記載があり、劇場公開される映画なのだと気づきました。
表紙をめくると「ストーリー」が書かれており、なかなか社会派な内容です。
フムフムとうなずきながらページをめくり、自分の目を疑いました。
そこにはあの福山雅治さんの写真がありました。
ようやく事の重大さに気づき、改めて初めから見直せば、是枝裕和監督による「そして父になる」の企画書でした。

皆さんご覧になりましたでしょうか?主演の福山さんはスーパーゼネコンの設計技術者。
自ら企画したプロジェクトのプレゼンテーションをする場面から映画は始まります。
その際指し示す建築模型を、中央工学校の学生6名が製作しました。
完成後私は試写会に招かれ、学生には映画チケットを頂きました。
印象的なシーンで映画は終了。
暗転の画面に福山さんの名前が大きく映ります。
その後静かな音楽とともにエンドロールが流れ、中央工学校と学生6名の名前に加え、何もしなかった割には私の名前もありました(この映画はカンヌ国際映画祭に出品されていますが、その際の英語表記の確認依頼を受けました)。

模型借用の依頼から始まり撮影終了、そして試写会から公開に至るまで大変丁寧なスタッフの皆さんの対応。
是枝監督率いる一流の映画人の真摯な姿勢を感じる素晴らしい体験でした。
まだご覧になっていらっしゃらない方にはぜひお勧めします。
その際はエンドロールまでの鑑賞を忘れずに(苦笑)。
なお模型は17号館1階に展示中。ぜひご覧ください。

現在公開中の是枝監督の新作「怪物」を見てまいりました。
故坂本龍一氏のピアノ楽曲が美しく心に響き、魂を揺さぶられる映画でした。