校舎は生きた教材中央工学校の考える“実務教育”とは

2号館2階 Design Studio 体験型学習室

触れる、感じる、伝える、創る。
ものづくりのためにデザインされた学びの空間。

もしあなたが「一生に一度の買い物」とも言われる“家”を建てようとするとき、相談をする相手は「さわったこともないのにインターネットをちょっと調べたぐらいでもっともらしいことを並べるだけのプロっぽい人」ですか? それとも「実体験に基づいたアドバイスができる経験豊富なプロ」ですか? どちらか聞くまでもありませんよね。

中央工学校は学習指導の重点を『理論より実際』としており、1909年の開校以来、実践的な人材を世に送り出すことを使命としています。そして、そんな人材を育てるためのヒミツがこの教室には隠されています。

『触れる』カタログ366冊、素材見本804点を収蔵するマテリアルエリア

今はインターネットを使って何でもすぐに調べられる時代ですが、本物の木材と化粧合板とカッティングシートは表面だけだとほとんど一緒に見えてしまい、実際に触ってみなければその違いがわかりません。石や金属にも見た目が似ている材質が存在するため、設計者としてその違いを体験しておくことはとても重要です。しかもそれらは自分で実感するだけでなく、プロとしてクライアント(依頼主)に伝えることができなければなりません。そのために必要なことは実に簡単。『数多く触れること』。これ以外にありません。
Design Studioはカタログと素材見本をたっぷり並べて自由に閲覧できるようにして、その一角を「マテリアルエリア」と名付けました。

「それって、ただのショールームでしょ?」などと侮るなかれ。これらのサンプルを個人が閲覧しようとすれば、メーカーに登録をしてから欲しいサンプルを申請して郵送してもらうか、あるいは見学申し込みをしてからメーカーのショールームを訪れなくてはなりません。これをメーカーごと素材ごとに繰り返していくことになるのですが、いずれも提供してもらえる個数や見学時間に制限があるものばかり。仮に個人の努力によって素材だけは集められたとしても、2〜3年ごとに新しくなってゆくカタログを管理・アップデートし続けてゆくには大変な労力が伴います。
Design Studioなら、300冊を超えるカタログ、800点以上の素材見本に触れて素材の特性をしっかりと確かめながらアイディアを膨らませ、図面やパース、模型へと落とし込んでゆくことが可能です。

素材の質感、重量、剛性などを理解しないままで設計した図面と、実際に触れた経験のある人が書いた図面とでは、実現性と説得力に大きな差が現れてしまいます。これは技術者として決定的な差異です。

※マテリアルエリアに収蔵された素材の種類についてはこちらの配置図をご覧ください。

実際に仕事をされている方なら、このマテリアルエリアがどれだけ贅沢な空間かご理解いただけることでしょう。既に現場で活躍している卒業生たちに、羨望のまなざしを向けられていることが何よりの証拠です。

『感じる』百聞は一見に如かず。ライティングシミュレーションエリア

照明計画は室内設計において重要な位置を占めますが、照明の印象は実際の空間に身を置いてみないとなかなか実感が湧かず、カタログだけでつかみきれるものではありません。
Design Studioのライティングシミュレーションエリアでは、4灯~5灯の異なる照明器具を仕込んだブースが3つも並んでおり、照度や色度を比較しながらの実験が可能です。

とはいえ、ライティングシミュレーションエリアはブースの中を照らしているだけであり、照明本来の役割である「部屋全体に明かりを灯す」という感覚まではつかみきれません。そこで、Design Studioはなんと教室全体もライティングシミュレーションに対応させてしまうことにより、ブース実験だけではつかみきれない「自分が包まれる感覚」までも体感できるようにしてしまいました。

現在の照明設備は白熱灯や蛍光灯から徐々にLEDランプへと変わりつつあり、技術も大きく変貌しているので、実際に触って経験を積んでいくことの重要度が以前にも増して求められています。

『伝える』自由にレイアウトできるディスカッション・プレゼン空間

Design Studioの机や椅子は全て可動式となっており、マテリアルエリアの収納棚さえ移動させることができるため、学生達は机や収納棚を自由に移動して、的確な形態を探りながらコミュニケーションを高め合います。
効率的で快適な制作環境を模索しようとする姿勢は職業人としての心構えを育むことにもつながってくるため、社会人としての素養が自然と身に付いてゆきます。この経験を積ませるために、自由な発想を実現できる「固定されない教室」が必要なのです。

しかも、このDesign Studioには通常の教室なら必ずある教壇がありません。通常の教室では先生が一段高いところから教え諭しますが、ここDesign Studioでは先生は学生の目線まで降りてきて、フラットな位置でアドバイスします。
通常の教室で行う授業を「ホールで開くリサイタル」に例えるならば、ここDesign Studioで行う授業はさしずめ「スタジオで行うセッション」。リサイタルと違ってただ聞くだけではなく、自分も楽器をとって演奏に参加しなくてはなりません。

建築物は複数の人の手による総合芸術といえます。建設予定地の測量から始まり、土台となる土木工事が完了してから柱を立て、屋根が乗り、壁が塗られてゆく。やがて、水道や電気などのインフラが整えられ、内装をしつらえた後に家具が運ばれてきて完成を迎える。その工程ごとに異なる専門家が現れ、次の工程へと引き継がれてゆく。つまり、たった一人では完成させられないからこそ、コミュニケーション能力やプレゼンテーション力が重要になってくるのです。
「図面を提出したら課題は終わり」「プレゼン資料がきれいにまとめられたから合格」という表面的な評価をしていたのでは実践的な技術者など育ちません。そんな授業なら、机と椅子しかない従来の教室で十分です。先生やクラスメートたちとコミュニケーションを図り、自分の発想や考えをしっかりと構築して表出していくことが求められているからこそ、Design Studioは存在するのです。

『創る』図面だけでは終わらない。「その先にあるもの」を見据えて。

中央工学校には建築系以外にも、土木や測量、造園、機械設計、家具制作、舞台装飾といった多彩なジャンルの学科があります。その全てに共通するのが「図面」です。図面はものを作るにあたってジャンルや国籍を問わずに必要となる、いわば共通言語です。
図面をただ書くだけならば、CADアプリケーションを習得できればそれっぽいものは作れるでしょう。けれど、その図面を見た職人たちが設計者の意図を理解できるか、それを読み解いて作業できるか、実際にものが造れるのか、となればそれはまったく別の話です。

「独りよがりな作品」ではなく、「その先にある作業を意識した図面」を書けるか。そして「さらに先にある完成品を見据えた設計」ができるか。中央工学校の図面教育の真髄はここにあります。

 

上の動画は建築室内設計科による教科「透視図」の授業風景です。ここに至るまでに経験してきたことを総動員してまとめ上げた「総合芸術の最初の一歩」が間もなく完成します。

 

完成した作品は、23号館(愛称:RISE)4階にある学生作品展示ギャラリー、あるいは毎年3月に行われる学生作品展にてご覧ください。

 

【この教室を主に使用する学科】
建築学科、建築工学科、建築設計科、建築室内設計科、建築科(夜間)インテリアデザイン科、エンターテインメント設営科

【この教室で行われる授業】
「建築意匠デザイン」(建築学科、建築工学科、建築設計科)、ショップデザインⅠ・Ⅱ、照明計画(以上、建築室内設計科)、インテリアデザイン設計(インテリアデザイン科)、インテリア計画(インテリアデザイン科、エンターテインメント設営科)など。

実際の授業での活用事例については、以下のキャンパスニュースをご覧ください。